高血圧:DrBlue:So-netブログ
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これはついこの間、アップした原発性アルドステロン症の話しです。しかし、今月の内科学会誌を見るとどんどん見つけようというドクターの論文が載っていた。これには疑問がある。どんどん見つけてどんどん手術しようと言うが、薬で治療するのと、手術するのとの遠隔成績がはっきりしてない。患者に不要な手術を強いる必要はない。この点のエビダンスが不明だ、、。
カロリーカウントと体重減少
臨床高血圧の分野での最近の話題は、原発性アルドステロン症(PA)の頻度は従来考えられているよりも多いのか?という問題である。Hypertensionの9月号に多いという意見と、いや従来と変わらないという意見の二つが載っていた。とても興味深い。2、3年前の内科学会総会のポスター発表で、PAは増えていて、どんどんスクリーニングしてどんどん手術しています、という発表を見てのけぞってしまった。
Hypertensionで、PAの頻度は増えていないという論文は、Norman M. Kaplanである(Hypertension. 2007;50:454-458.)。勿論、私はKaplan派である。
ボトルが供給しながら窒息赤ちゃん
PAの診断は難しい。まず、1)レニン活性(PRA)が抑制されていること、2)血漿アルドステロン濃度(PAC)が高いこと、が必須である。1)はレニン分泌刺激でもPRAが抑制されていること、2)は抑制試験でも抑制されないこと、である。副腎に腫瘍があればPAくさくなる。なければ特発性アルドステロン症。まあ古いタイプの私には色々言いたい事がある。昔は(この昔がオッサンの口癖だ)、レニン活性とアルドステロン濃度はラボで自分で測っていた。今は外注だ。昔は測定法で博士論文が出来た程だから時代が違うのだとはわかる。しかし、レニンやアルドステロンは塩分摂取量が大きく影響する。ただPACが高いだけで、PAなんて言われては困る。ち� ��んと塩分摂取量を一定にして、最低、レニン分泌刺激でもPRAが抑制されていることと、アルドステロン抑制試験でも抑制されないこと示す必要がある。今は、スクリーニングで血漿アルドステロン濃度とレニン活性の比を見るのだが、これでどんどこ手術してしまうのは早計だろう。
肩に近い上腕の前面の痛み
今回のKaplanの論文の最後にこんな逸話を載せている。
A very wise and seasoned clinician, the late John Swales, said it very well 25 years ago, "The harder we look, the more patients with aldosteronism we are likely to find, though the yield in term of disorder correctable by surgery is likely to decline spectacularly, the more widely we cast our net."(Swales JD. Primary aldosteronism: how hard should we look? BMJ.1983;287:702-703.)
もう25年も前に賢明で経験豊かな臨床家の故ジョン・スウェールズがこう言っている。一生懸命診れば診るほど、アルドステロン症の患者は見つかる。しかし、手術の観点から言えば、網を拡げてアルドステロン症を見つければ見つけるほど、その外科手術の成果は劇的に減じるようである。
余計なことを言えば(蛇足ではあるが)、高血圧屋と内分泌屋の違いもあるんじゃないか。PAは内分泌疾患だが、これは高血圧屋の範疇である。糖尿病疾患がインスリンを中心とする内分泌疾患でもあるが、これは代謝疾患である。手術をしてまで是正するかどうかは高血圧疾患としてどう考えるかがポントだろう。 In fact, in long-term follow-ups of 420 patients who had unilateral adrenalectomy for APA in papers published from 1987 to 2001, only 52% were improved or cured. With laparoscopic or open adrenalectomy at the Mayo Clinic, only one third of 93 patients were cured. APAとはアルドステロン産生腫瘍のことで、これを外科摘出しても半数しか病態は良くならない。Mayoクリニックでも3分の1しか良くならない。
私は日本高血圧学会の特別会員だが、これを高血圧専門医にしようという動きがある。私は今のところ専門医制度導入には積極的に賛成しない。ありふれた疾患(国民病)としての高血圧対策に専門医でなければという必要はないと思うし、これによってまた診療に(ある種の)規制を加えることには反対である。しかし、効果のない、あるいは曖昧な(PAの治療と称して)外科手術が横行するならば、改めて「専門医」が必要なのか?と思ったりする。
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